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COLUMNSブログ「論語と算盤」

電子部品業界-6

2022年4月14日

電子部品業界の6回目最終回です。

 

今回は、「投資力」の分析です。

 

 

取り上げる指標は、営業CF対投資CF比率

各社別の営業/投資CF推移ROICWACCとなります。

 

なお、各指標についての説明はこちらです。

 

 

営業CF対投資CF比率

〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕

 

 

 京セラTDKは、大きく上下しており、また直前期で低下しました。

 

 一方、村田製作所日本電産の変動はそこまで大きくはなく、

直前期は上昇しています。

 

値の上昇は、営業CFの拡大、あるいは投資CFの減少など、一概には優劣を付けづらいので、それぞれ確認していきます。

 

 

各社別 営業/投資CF推移

〔実額ベース〕

 

 

 村田製作所は、3期連続で営業CFを拡大しています。

投資CFは、2019決算期でかなり増加させましたが、

その後2期連続で縮小しています。

以上から、FCF(フリー・キャッシュフロー)は2期連続で増大しています。

このことは、前回見た手元資金の増加につながっています。

 

 

 

 日本電産は、安定的に営業CFを生み出しており

特に直前期の創出額は大きくなっています。

2020決算期の投資CFが大きく膨らんでいますが、

これはM&A(事業取得による支出)とのことです。

当社の基本的な経営戦略が、革新的変化の生成新市場のニーズへの素早い対応であることから、今後もM&Aに積極的に取り組んでいくのでしょう。

 

 

 

 京セラは、直近の3期において、

営業CFが2,000億円強のレベルで安定しています。

一方、投資CFは直近2期で増加させており、

積極的な事業展開の姿勢がうかがえます。

内容は、有形固定資産への投資M&Aへの支出となっています。

 

 

 

 TDKは、3期連続で営業CFを増大させています。

一方、投資CFは2018決算期から2期連続で縮小していますが、これは関連会社の売却によるキャッシュ・イン短期投資の抑制などが主因となっています。

これらの施策で手元資金を積み上げた上で、直前期は一転

短期投資や固定資産への支出を増やしています。

また、関連会社の売却も抑制しており、

事業成長に舵を切る姿勢が垣間見られます。

 

 

ROIC

〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕

 

 

 事業への投資総額から、どの程度の利益を生み出したかの指標ですが、

ここでも村田製作所が他の3社を引き離しています。

営業利益額や営業利益率のグラフと同様、奇数年決算期に上昇しています。

ただし、直前期の値は2019決算期を下回っています

これは、営業利益額が17.4%増えたのに対し、純資産(株主資本)が19.8%増加したこと、また金額としては小さいのですが有利子負債も22.1%増加したためです。

 

 日本電産は、繰り返し述べてきましたが、2期連続で低下した後、直前期で挽回するというスタイルがここでも見られます。

直前期における営業利益額の増大が、各種の指標を良化させています。

 

 僅差でTDK3番手です。

4.5%以上というレベルで、安定しています

ただし、わずかながら低下傾向ではあります。

 

 京セラは、4期間を通じて最下位に甘んじており、

また2期連続の低下傾向を示しています。

総資産が4社中最大であり、資金力も強いため、改革・変革による業績良化が大いに期待されるところです。

 

 

WACC

  〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))

+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕

 

 

 先ほどのROICからWACCを控除すると、

村田製作所以外の3社はマイナスとなります。

 

 マイナスということは、投資総額からのリターンが、投資総額の調達コストを下回っているということです。

 

 村田製作所は、そもそもROICが高いレベルであることに加え、WACCではβ値が低めであることから株主資本コストが抑制されています。

 

 日本電産は、WACCの値が最も大きくなっています。

これは、β値が高いことから株主資本コストが大きくなっているためです。

 

 京セラは、WACCが4社中最も低く資本調達力が良好と言えます。

しかしながら、ROICが低すぎて、結果的にマイナスになっています。

 

 TDKは、WACCの値が2番手と、コスト高になっています。

β値が高いため、株主資本コストが高くなっていることが主因です。

 

 

今回、この業界で感じたことは、

各社それぞれ全く違った状況にいるということです。

 

 

村田製作所は、あらゆる面において良好な推移を見せており、

今後の継続さらなる上昇いかに実現するかが課題となりそうです。

 

日本電産は、直前期の挽回は力強く感じますが、

今後の動向についても気になるところです。

 

京セラは、上述したように、新たな成長に向けた

何らかの取り組みが求められていると感じます。

 

TDKは、次第に力を蓄えてきているようであり、

その一角が見え隠れしています。

 

 

以上で、電子部品業界を終了します。

 

 

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