電子部品業界の5回目です。
今回は、「資金力」の分析です。
取り上げる指標は、手元資金推移、手元流動性比率、
手元資金有利子負債カバー率、総資本営業CF比率、
売上高営業CF比率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【手元資金推移】
〔手元資金=現金預金+有価証券(短期保有目的)〕
直前期では、3,800億円台に3社が位置しています。
京セラはトップですが、2期連続で減少傾向にあります。
村田製作所は2018決算期に4位でしたが、
高い伸び率で3期連続増大させています。
TDKも3期連続の増大となっています。
日本電産は3社に比べると少なくなっており、
2,000億円台での推移となっています。
【手元流動性比率】
〔手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)÷(年商÷365)〕
先ほどの上位3社が、自社日商の約90日前後の手元資金を有しています。
TDKは、2期連続の増加となりました。
京セラは、2期連続で減少しています。
2年前は高いレベルであり、持ちすぎの感もあったかもしれませんが、そのおかげでコロナ禍の売上減少という直近2期間に対応できた側面もあるでしょう。
そして今後はまた、維持・増大が求められるかもしれません。
村田製作所は、直近2期間の伸び率が非常に高くなっています。
コロナ禍における資金確保策が奏功しているのかもしれません。
日本電産は、50日前後というレベルです。
この値に基準値などないのですが、製造業としては60日程度あれば一応安心なレベルかと思われます。
コロナ禍において、50日前後ということは、かなり絞り込んでいる感もあります。
特に2020決算期の減少は、比較的大きめの投資が影響しているようです。
【手元資金有利子負債カバー率】
〔手元資金有利子負債カバー率=(現金・預金+有価証券)÷有利子負債〕
(京セラと村田製作所の3・4年前はグラフに収めていません。)
京セラは、上述のように手元資金が大きい上に、有利子負債がかなり少額です。
2020決算期では、有利子負債が前期の8倍以上に増えましたが、それでもこの値は、直近で400%程度とかなりの高レベルです。
村田製作所も2019決算期に有利子負債を前年比で9倍近くにまで増やしています。
直近では、手元資金の拡大と有利子負債の返済により再度上昇しています。
TDKは、2020決算期で有利子負債の返済を進めています。
また、手元資金も拡大させています。
日本電産は、2020決算期の投資に伴う有利子負債の増大で、値が低下しました。
ただし直前期では、手元資金を増やし返済を進めたため、反転しています。
【総資本営業CF比率】
〔総資本営業CF比率=営業CF÷総資本〕
村田製作所が直前期で15%超とトップです。
ただし直前期は、営業CFの伸び率が2019、2020決算期との比較でやや鈍化したため、総資本の伸び率を下回っています。
日本電産が2番手です。
直前期は、営業CFの伸び率が前期より30.4%伸びています。
続いて、TDKです。
2期連続で伸長させたのち、直前期で低下しました。
直前期は、営業CFが前年とほぼ同額であったのに対し、総資本は前年よりも23.6%増大しています。
京セラは、2期連続で微減となりました。
総資本は、2020,2021決算期ともに7%以上伸長している中、営業CFは2020決算期に2.5%ダウン、2021決算期は2.9%アップという状況です。
【売上高営業CF比率】
〔売上高営業CF比率=営業CF÷売上高〕
4社のグラフの形状は、総資本営業CF比率と似た形になっています。
トップはやはり村田製作所で、3期連続の伸長、直近では22.9%となっています。
2番手がTDKで15.1%、続いて京セラが14.5%、最後に日本電産が13.5%となっており、この3社は近接しています。
今回、特に気になったのは、京セラの資金力の強さです。
ただし、直近2期間はそれほど芳しくなく、それもまた気になります。
今回は以上です。
次回は、「投資力」を見ていきましょう。
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