電子部品業界の4回目です。
今回は、「資本活用力」の分析です。
取り上げる指標は、総資本回転率、売上債権回収日数、
棚卸資産回転日数、流動比率、自己資本比率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【総資本回転率】
〔総資本回転率=売上高÷総資本〕
直前期は4社とも低下しています。
売上高を拡大した3社(村田製作所、日本電産、TDK)においても、
その伸び率を超える総資本の増大となっています。
トップは日本電産です。
直前期の売上高の上昇率5.4%に対し、総資本の上昇率は6.3%です。
(表の回転数について、小数点第3位まで見ると、直前期は微減しています。)
続いて村田製作所です。
直前期の売上高の上昇率6.3%に対し、総資本の上昇率は9.4%です。
TDKは前年の2位から直前期で3位になりました。
直前期の売上高の上昇率8.5%に対し、総資本の上昇率は23.6%です。
京セラの直前期は、4社中最大の総資本がさらに拡大したことに加え、売上高が低下したことから、総資本回転率が低下しました。
【売上債権回収日数】
〔売上債権回収日数=売上債権残高÷日商(売上高÷365)〕
全体的にみて、BtoBのビジネスモデルとしても、少し長めと感じます。
業界的にそういうスパンなのでしょう。
最短期間は村田製作所です。
直前期は76.6日と2.5ヶ月程度です。
2019決算期に対して、翌年は3.2日、直前期はそこから9.5日長期化しています。
続いては京セラです。
短縮化が進んでいましたが、直前期は4.4日長期化して81.2日、3ヶ月弱になりました。
日本電産は、99.5日です。
2019と2020決算期は90日代前半でしたが、直前期はやや長期化しました。
TDKは直前期で大きく長期化しました。
2020年決算期の83.5日から106.3日へと、直前期だけで22.8日長期化しています。
【棚卸資産回転日数】
〔棚卸資産回転日数=棚卸資産残高÷日商(売上高÷365)〕
在庫金額とすると比較的多めと映ります。
多品種を扱っているというのも要因でしょう。
また、サプライチェーンの万一のトラブルを考慮している影響もあるでしょう。
最短は日本電産です。
2番手はTDKで、直前期でやや長期化しました。
売上債権回収日数とともに比較的大きく長期化していますので、CCCの指標は悪化したと想定されます。
(CCC=現金化期間:Cash Conversion Cycle
=売上債権回収日数+棚卸資産回転日数-仕入債務支払日数)
上位2社は近接した実績で推移しています。
3番手は村田製作所、そして京セラと続きます。
この2社もかなり近接した推移です。
第1回目の従業員数推移と同じような構成の2グループに分かれています。
【流動比率】
〔流動比率=流動資産÷流動負債〕
こちらも上記同様の2グループ化というイメージになっています。
最大は村田製作所です。
詳細は明示しませんが、流動資産の内訳は、現金預金、売上債権、棚卸資産が概ね1/3ずつとなっています。
また、流動負債を現金預金のみで賄える状態です。
続いて京セラです。
2期連続で低下していますが、300%近くと十分なレベルです。
当社も、流動資産の内訳について、現金預金、売上債権、棚卸資産が大雑把に1/3ずつというイメージです。
3番手は日本電産です。
低下傾向でしたが、直前期で盛り返しています。
膨らんできた流動負債が直前期では減少し、微増していた流動資産がやや多めに増加しました。
最後はTDKです。
130%程度で推移しています。
流動資産は、上述したように売上債権と棚卸資産の増加が目立ち、流動負債では仕入債務と未払費用が増加しています。
【自己資本比率】
〔自己資本比率=自己資本÷総資本〕
こちらも2グループ化の状態です。
村田製作所と京セラは70%台を下回ることなく、高い水準で推移しています。
村田製作所は、自己資本比率がこの水準でも、当期純利益が大きいために前回見たROEの値が充分なレベルになっています。
一方、日本電産とTDKは、概ね40%台の水準で推移しています。
レバレッジ効果を効かせたとは一概に言えませんが、日本電産のROEは11.3%と10%を超え、村田製作所に肉薄しています。
今回、気になったのは、3指標における2グループ化の状況です。
各指標に絡まる戦術面が似ているのかもしれません。
今回は以上です。
次回は、「資金力」を見ていきましょう。
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