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COLUMNSブログ「論語と算盤」

財務分析(しまむら-4)

2021年9月2日

株式会社しまむらの最終回です。

 

財務分析指標を確認します。

 

 

 収益性から見ていきましょう。

 収益性の代表的指標は、総資本経常利益率経常利益÷総資本〕です。

 

 以前(サイゼリア-4)示したように、この総資本経常利益率は、

売上高利益率の流れと、資本回転率の流れという2系統に分かれます

 

 ・売上高利益率の代表格・・・売上高経常利益率経常利益÷売上高

 ・資本回転率の代表格 ・・・総資本回転率売上高÷総資本

 この両者を掛け合わせると、上述の総資本経常利益率の計算式になります。

 

 また、両者は数値が大きいほど良好です。

よって、両者を掛け合わせた場合でも、大きい数値であるほど良いわけです。

 

 総資本経常利益率が良化もしくは悪化した場合、この2系統、つまり売上高から生み出す利益が影響したのか、資本の活用度合いが影響したのかを判別することができます。

  

 

 では本題に戻ります。

当社の総資本経常利益率を下表に示しました。

2020.02期に低下しましたが、直近の2021.02期では3ポイント近くの大きな伸びが見られます。

 

 この要因について、売上高利益率が貢献したのか、はたまた資本回転率が貢献したのか確認してみましょう。

  まず、売上高利益率の3指標の図表を下に示します。

 

 

 

 3つの指標全てが、総資本経常利益率と同様に、2019.02期よりも、2020.02期よりも、直近の2021.02期が上昇していることがわかります。

 

 

 次に、資本回転率の6指標の推移を下表に示します。

 

 各項目はそれほど変化していないようです。

売上債権回転期間棚卸資産回転期間は小さい数値(短期間)であるほど良好で、それ以外の指標は大きな値ほど良好です。

 

 

 表の1行目の総資本回転率は、微小ながら2期連続で悪化しています。

 

総資本の投入先である流動資産か固定資産、どちらの効率が悪化したのか確認します。

 

 ・流動資産回転率売上高÷流動資産〕は、悪化しています。

 

 ・固定資産回転率売上高÷固定資産〕は、ほぼ横ばいです。

 

 以上から、流動資産の効率が悪くなり、総資本回転率を悪化させたことがわかります。

 

 

 さらに深掘りするため、流動資産の中で問題になりがちな売上債権回転期間棚卸資産回転期間を確認します。

 

 ・売上債権回転期間売上債権残高÷日商〕は、長期化、つまり悪化しています。

  ただし、業種がら短期間であり、金額的にも大きくありません。

 

 ・棚卸資産回転期間棚卸資産残高÷日商〕は、

2020.02期で悪化し、直近では改善しています。

  また、差日数(差額)は大きくありません。

 

 両方とも、大きな問題は見つかりません。

 そこで貸借対照表を確認すると、流動資産回転率を悪化させた主要因は有価証券の増大であることがわかります。

 

 これは、第2回で述べた内容です。

手元資金としての有価証券(短期保有)は支払能力の一助となりますが、資本の有効活用という収益性の観点からは必ずしも好影響とは言えなくなります。

 

 以上から、総資本経常利益率が大きく良化した理由は、

主として売上高利益率の貢献であることがわかります。

 

 

 次に、安全性の4指標を下表で示します。

 

 

 表の上2行は、短期の支払能力を表します。

 

 ・流動比率流動資産÷流動負債〕は、100%以上が必須ですが、

当社のレベルは十分すぎるほどです。

 

 ・当座比率当座資産÷流動負債〕は、100%以上が望ましいとされますが、

当社は極めて望ましいレベルと言えます。

 

 ただし、両指標は2期連続で低下しており、特に直近の2021.02期の下げ幅は大きくなっています。

これは、流動資産や当座資産の伸び率よりも、流動負債の伸び率の方が大きかったためです。

 

 特に2021.02期では、売上拡大に伴う費用増大を主因として、自ずと決算時点における未払が増えました。具体的には、買掛金未払金未払費用未払法人税等などです。

 

 

 表の下2行は、長期の支払能力を表します。

 ・固定長期適合率固定資産÷(固定負債純資産)〕は、ほとんど横ばいです。

  100%未満であることが必須であり、問題はありません。

 

 ・自己資本比率純資産÷総資本〕は、若干低下傾向です。

  ただし、直近で85%超であり、

通常なら経営基盤が極めて盤石という表現になるでしょう。

   

  逆に、上場企業なんだから、もっとレバレッジを利かせて、

株主に還元してほしいという声も出てきそうです。

   (レバレッジとは、有利子負債を活用して投資資金を増大させ、

事業を拡大させることで、ひいては株主資本が生み出す利益率を高めることです。)

 

 

当社は、「信頼性の高い誠実な企業運営を続けること」を基本方針とされています。

 

信頼性と誠実さを背景とした、今後の事業展開に期待したいと思います。

 

 

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