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COLUMNSブログ「論語と算盤」

財務分析(しまむら-3)

2021年8月30日

株式会社しまむらの3回目であり、キャッシュフローを確認しましょう。

 

 前回述べたように、短期保有の有価証券を考慮すると、

キャッシュフローは潤沢と言えます。

 

 

 下表は、営業活動によるキャッシュフローです。

 

 前期(2020.02期)は、売上高に対する当期純利益比率2.1%、金額で107.6億であることから、当期純利益としてのキャッシュ・インはやや少なめに感じます。

 

 一方、直近(2021.02期)では売上高が増大し、当期純利益比率4.8%と大きく上昇したことから、当期純利益で257億円のキャッシュ・インとなりました。

 

 

 参考までに、引当金の扱いを確認しておきます。

引当金は、貸借対照表の流動負債固定負債に計上するために、

損益計算書で費用計上することになります。

 

 そうすると当期純利益は減少してしまいます。

ところが、「引当てておく」と言うだけで、社外にキャッシュが流出しているわけではありません

以上のことから、当期純利益に加算する(足し戻す)処理により、

キャッシュ額を計算することになります。

 

 当社の場合、引当金は2期とも前期よりも増えていることから、キャッシュ・イン要因となっています。

 

 

 大きくキャッシュ・アウトとなったのは、「その他流動資産」の増加です。

これは前回述べた内容であり、注記の無い「その他」項目の増加によるものです。

 

 また、その他固定負債でキャッシュ・イン額が膨らんでいますが、これも前回述べた新規出店に伴う資産除去債務の増加分となります。

 

 

 仕入債務とその他流動負債は、決算後1~3ヶ月の内に支払いや返済を迎えます。

喜ぶのも束の間、短期的なキャッシュ・インとなります。

 

 それに対して、資産側の在庫(棚卸資産)や売掛金が必要以上に膨らんだ場合、

なかなか平常に戻りづらくなります。

 当社の場合、小売業なので売掛金は極めて少額になっており、在庫についても比較的絞られているようなので、問題ないと判断できます。

 

  以上から、少々目を引くのは、その他流動資産の「その他」となります。

ただし、金額的にはそれほど大きくありません。

 

 

  次は投資活動によるキャッシュフローです。

 

 直近の2021.02期は、大きくキャッシュ・マイナスとなっています。

 

 前年から当年に増えた分が、当年の投資額となり、約540億円ということです。

このうち、固定資産への投資額は130億円程度であり(減価償却を考慮)、残りの410億円が短期保有目的の有価証券です(流動資産の当座資産に計上)。

 

現金を遊ばせないために、財テク運用しているものと目されます。

 

  以上から、営業活動CF投資活動CFを加算したFCF(フリー・キャッシュフロー)は、

 ・2020.02期・・・約84億円のキャッシュ・イン

 ・2021.02期・・・約6億円のキャッシュ・アウト

となりました。

 

 

 最後は財務活動によるキャッシュフローです。

 

 借入金社債という有利子負債が一切なく、そういう意味で完全無借金経営となります。

増資も行っていないので、変動額は主として配当金次第となります。

 

 

 

最終的なキャッシュ動向は、上表のように、

        2020.02期は20億円ほどのキャッシュ・イン

        2021.02期は78億円ほどのキャッシュ・アウト

                          となりました。

 

 

 前回述べたように、手元資金(現預金と短期保有目的有価証券の合計額)としては潤沢なので、何ら気になる点はないと言えます。

  

 おそらく、今後の成長分野に潤沢なキャッシュを投入したいのでしょうが、他企業同様に、その成長分野が見つからないというのが、もどかしい所ではないかと推測されます。

 

 

次回は、株式会社しまむらの4回目、最終回の予定です。

 

 

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